おまめ note

自閉症児ママによる、自閉症児ママのためのブログ

幼稚園に行けなくなった自閉症長男の園生活10か月を振り返る

長男は、2021年(令和3年)4月に私立幼稚園に入園し、療育と併用しながら通っています。

入園当初から何度もお友達とトラブルを起こしたり、制服が着られなかったり、チック症が出たり……。
着かない日々が続いていきました。

年少の3学期に入り登園拒否に至った今、入園からの10か月を振り返りたいと思います。

チック症とは、まばたきや首振りなど一見癖のように見える行為が現れる精神疾患です。 引用:リタリコ発達ナビ「チック症とは、癖のように見えるチック症状の見分け方と治療法について」

 

幼稚園探しから、ハードルが高かった

まさか、幼稚園探しがこんなにもハードルの高いものだとは想像もしていなかった私は、7月頃からのんびりと園探しを始めました。

しかし、「ここだ!」と思える園がなかなか見つからない……。
焦りと不安にだんだんと膨らんでいきました。

公立幼稚園「どんな子でも受け入れます」

この時、すでに自閉スペクトラム症の診断を受けていたので、見学の前に「自閉症でも受け入れてもらえるか」の問い合わせをしました。

2か所の公立幼稚園に問い合わせ、どちらも「障害の有無に関わらず、どんな子でも受け入れます」とのことで、安心して入園説明会に向かいました。

当時は新型コロナの流行もあり、ほとんどの園が園庭開放を中止。
長男を連れて見学に行ったり、通園している子どもたちの様子を見る機会がありませんでした。

全体説明の後、個別で園長先生に質問。

  • 自閉症の診断を受けているが、受け入れてもらえるか
  • 発達障害を抱える子は通っているか(通っていたか)
  • 通っていた場合、何か大きなトラブルはなかったか
  • 加配はあるか?
この質問は、見学・問い合わせをしたすべての園に聞きました。

どちらの園も事前の問い合わせと変わらず、「”公立なので”どんな子でも受け入れます」という回答。

あくまでも当時の私と旦那が感じたことですが、”快く受け入れる”というよりも、”決まりだから受け入れる”というような印象を受けました。

 

また、自治体にて教員の配置人数が決められており、私の住む地域の公立の幼稚園には加配の制度はありませんでした。

クラス・学年に関わらず、園全体で支援が必要な子のサポートしていくとのことで、そこにも少し不安を感じました。

「加配制度」とは、他児と同じように保育園の生活を送ることが難しい子に大人がつき、生活面や集団参加をサポートしてくれる制度のことです。 引用:リタリコ発達ナビ「発達が気になる子どもの保育園や幼稚園での「加配制度」とは?障害児保育や小学校以降のサポートについても解説。児童発達支援や保育所等訪問まで【サポート情報まとめ】」

 

マンモス私立幼稚園「もう診断がついているんですか?!」

私たちの住む地域には、私立幼稚園が2か所あります。

1か所は現在通っている幼稚園で、もう1か所は”the私立幼稚園”という印象のマンモス園でした。

 

療育の先生からのアドバイスもあり少人数の幼稚園を希望していたため、あまり期待はしていなかったのですが、一応問い合わせてみることに。

事情を説明するや否や、園長先生から「入園前から(その年齢で)診断がついているんですか?!」と驚かれました。

「そういうものは幼稚園に入ってから分かるものでしょう」と長々と持論を聞かされ、早く電話を切りたくて仕方ありませんでした…...。

私立の園でしたが加配のための教員配置はなく、支援が必要な時は、手が空いている先生が対応するとのこと。
明らかな拒否をされることはありませんでしたが、どうも「入園前から分かっていること」に懸念があるようでした。

要支援児受入の園ですら、嫌煙される

私の住む自治体は「私立園や認定こども園においても、支援が必要な子を積極的に受け入れていく」という協定をいくつかの園と締結をしています。

要支援児受入指定とされている園のなかから、ぎりぎり通えそうな場所にひとつだけこども園を見つけました。
ホームページの印象もとても良い幼稚園だったので、さっそく問い合わせ。

最初は明るく受け答えをしていたのに、「自閉症でも受け入れてもらえるか?」と聞いた瞬間に声色が変わり、しばらく保留。 おそらく上席の方に確認されたのでしょう、回答は「障害の程度による、子どもを見て見ないと分からない」とのことでした。

この制度は「絶対受け入れる」と約束されたものではないこと、園にも事情があることは分かりますが、「自閉症」と伝えた途端に伝わってくる空気感に傷つかないわけがありません。

入園前から診断がついている子と、入園してから診断がつく子との間に、いったいどれだけの違いがあるというのでしょうか。

障害を抱えているというだけで選択肢が減るという現実に、愕然としました。

事前に障害を申告するだけでこんなにも辛い目に遭うのかと心が折れかかったときに、藁にも縋る思いで連絡をしたのが今通っている幼稚園です。

地域の中では一番距離が遠く、なんとなく「合わない気がする」と後回しにしていたのですが、診断名を伝えても「もちろん大丈夫ですよ」と即答してくれました。

6か所の幼稚園・こども園に問い合わせをして、快く受け入れてくれたのは、1か所だけでした。

入園してからも、登園渋りで毎日通えない…

願書を提出してから入園式までもいろいろと大変でしたが、入園してからも慣れない園生活に長男はどんどん荒れていきました。

これまでの生活において大きな環境の変化は初めてだったため、長男の様子にとても戸惑いました。

何に対しても「イヤ」「しない」「いらない」と否定的なことばかりを言うようになり、食事、着替え、お風呂、手洗いなども拒否。

日常生活がスムーズに進まず、私もついイライラして怒ってしまい、自己嫌悪に陥る日々……。

長男の対応のために、次男のことが後回しになり、我慢させてしまうことも増え、家族全員がギリギリの状態でした。

「誰のために、何のために、幼稚園に通わせているんだろう……」

「こんなにしんどい思いをさせてまで、通わせる意味はあるのかな……」

癇癪を起して暴れる長男の側で、悔しさと申し訳なさが混じった涙が止まりませんでした。

親にとっても不安が付きまとう園生活

入園してからしばらく、お友達とのトラブルが毎日のようにありました。

トラブルの報告のたびに、担任から「長男君に伝えておいてください」と言われる。
でも、何を伝えてもエコラリアか無反応な長男に、何をどう伝えればいいのかが分からない。

2歳頃から他害行為が始まり、これまでに何十回、何百回と手を出してはいけないことを伝えていました。

それでも、うまく言葉で伝えられずに手が出てしまうのです。言い聞かせてどうにかなるなら、とっくに治っているはずです。
申し訳なさと、悔しさと、自分の不甲斐なさで押しつぶされそうな毎日でした。

「お願いだから、お友達を叩いたり押したりしないで」と、泣きながら抱きしめることしかできませんでした。

 

長男に「今日は何をしたの?」と聞いても、何も答えてくれないので、幼稚園で何をして、その時どんな気持ちだったのかが分からない。

幼稚園の連絡帳は業務連絡以外では使いません。
その日の活動を知るすべがなく不安が抑えきれず、一度「今日はどんな様子でしたか?」と担任の先生に電話したことがありました。

しかし、担任の先生の反応がいまいち。きっと、面倒な親と思われたのだと心配になり、それ以降、様子を聞くために電話をすることはしませんでした。  

何気ないことでも情報共有をする療育のやり方に慣れていたため、「幼稚園で何をしているのか分からない」という状況に慣れるまで、とてもしんどかったです。

保育のプロでも、療育のプロではない

3学期に入り登園拒否に至るまでに、学期末の懇談以外にも面談をお願いしたり、お手紙や電話で相談してきました。

伝える内容は毎度違いましたが、ほぼ毎回「あまり伝わった気がしない」と感じていました。

モンペにならないように、こちらの意見を押し付けすぎないようにと、オブラートに包みすぎた結果、うまく伝わらなかったのかもしれません。

もしくは、私が心配するほどには問題視されていなかったのかもしれません。

幼稚園の先生は保育のプロだけど、療育のプロではない。
幼稚園と療育は環境も目的も違うからと、勝手に諦めてしまうこともありました。

今になって思うことですが、どこまで求めていいのか、どこまでやってもらえるのかの判断は幼稚園に任せて、あれこれ考えすぎず、もっといろんな話をすればよかったなと思います。

「信じる」ことの大切さ

療育の先生に登園渋りについて相談をしたときに、
「大丈夫?やめとく?」と不安を引き起こすような言葉ではなく、「大丈夫!行ってらっしゃい!」と笑顔で背中を押す言葉かけをしてあげて と言われました。

親が不安そうにしていると、子どもは「ここは不安な場所なんだ」と感じてしまうそうです。

また、子どもは親の表情をよく見ており、親と先生の関係性も敏感に感じ取ります。

嫌がる長男の背中を「大丈夫!いってらっしゃい!」と押すことができなかったのは、幼稚園を、先生たちを信頼しきれなかったからなのだと気づきました。

なぜ、信頼できなかったのか

私なりに長男と先生たちの信頼関係をうまく築けるようにと、サポートブックを作成したり、電話や手紙、懇談でいろんなことを伝えたつもりでした。

少しでも情報は多い方がいいだろうと思っていましたが、逆に業務的になりすぎて私の想いまでは伝わっていなかったように思います。
もっと素直に自分の気持ちを伝えられていたら、信頼関係も築けていたのかもしれません。

微妙な認識や感覚のズレが、不信感を募らせるきっかけになったのだと思います。

園生活において大切な「信頼関係」

園生活において「子どもと先生」の関係性だけではなく、「先生と親」の信頼関係がとても大切です。

子どもが先生を信頼しているから親は先生に任せられるし、親が先生を信頼しているから子どもも安心して通えます。

「信頼して任せる勇気」を持てず、うまく関係を築けなかったため、長男にとって幼稚園を安心できる場所にしてあげることができませんでした。

先生も人だからこそ、信頼関係を作ることをもっと積極的にしていくべきだったなと思います。

これから入園を控えているママさんへ

これから入園を控えているお子さんがいるママさん・パパさんに伝えたいことは、

  • 園の先生方のことを「信頼して任せる勇気」を持つこと
  • 「大丈夫!いってらっしゃい」とお子さんを笑顔で送り出すこと

子どもが先生を信頼できるようになるためには、まず親が先生を信頼することが大切だと、この10か月を振り返って実感しました。

とは言え、何もないところから相手を信用することは難しいですし、信頼関係を築くことは簡単ではありません。

先生やほかの子どもたちとの相性もあるので、親の努力だけではどうにもならないこともあります。

でも、最初の一歩はこちらから。自分から歩み寄る姿勢と感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしてもらいたいなと思います。

おまめ