2020年5月、児童精神科にて長男は「自閉スペクトラム症」と診断を受けました。
自閉症児の母となってからたくさんのことを知り、たくさんの人と出会い、これまでの自分の価値観が大きく変わっていきました。
診断を受けるまで、そして診断を告げられた後しばらくは毎日が絶望でしたが、2年経った今は前を向ける日が増えてきています。
ここに至るまでの2年間を振り返ります。
ありのままの思いを綴っていますので、好ましくない表現があるかもしれません。
診断前夜、心のどこかで覚悟をした
2歳を過ぎたころから、癇癪がひどくなり年子育児に追われる日々の中、自分が何に困っていてるのかが分からなくなっていました。
つま先立ちをすることも、食事が少しでも熱いとお皿をひっくり返して一切食べなくなることも。
言葉が出ないことも、気に入らないとすぐに手がでることも、癇癪を起こすと後頭部を地面にぶつけることも__。
「みんなそんなもんだろう」と思っていたのです。
それまでに何度か行った発達相談でも、「どんなことで困っていますか?」という質問にうまく答えらませんでした。
明日になるのが嫌だった
言葉の遅れについて悩みだしてから1年、周囲からは「男の子なんてそんなもん」「そのうち喋るよ」と言われ続けてきました。
私を励まそうとして掛けられた言葉だと分かっていたけれど、誰にも共感してもらえないことが続くと「そんなことで悩んでいるのか」と否定されているようで……。
次第に、子育てに対する不安や悩みを言葉にすることが怖くなり、誰かに相談することはやめました。
その日をなんとか終えることに精一杯の日々。
朝、目が覚めると「今日も一日が始まった」とため息をつき、息子たちの泣き声を聞きながら早く一日が終わることを願う。
夜になると「また明日が来るのか」と、また、ため息をつく。
ただただ、毎日が辛かった。
長男と私は相性が悪い。
きっと長男は私のことが好きじゃない。
だから、いろんなことがうまくいかないんだ。
長男の気持ちが、分からない。何も伝わらない。
ずっとそんなことを考えていました。
困りごとでA4用紙が埋まってしまう
せっかく専門医に見てもらうのだから、しっかり伝えようと思い、児童精神科を初めて受診する日の前夜、長男の普段の様子について気になることをメモに書くことにしました。
ペンを握っても、困りごとが思い浮かばない……。当時の私は悩むこともできないほどに、ギリギリの状態でした。
これまで誰にも相談できなかったことを、ちゃんと聞いてもらおう。
朝起きてから夜寝るまでの一日の流れを思い返しながら、必死に考えました。
1番最初に浮かんだのは、「返事をしてくれない」ということ。
母子手帳の1歳半のページに「名前を呼んだら振り向くか」という質問がありましたが、当時の私はこの設問の意味が分からず「はい」に〇をしました。
10回くらい呼べば、1回こっちを見てくれるかな、という程度だったんですけどね……。
児童精神科に提出したメモの1つ目には、このように書きました。
「基本、返事はしない。たまに「はい」「イヤ」と反応することはあるが、おやつなど自分が好きなものか、要求に対して私が違うことをしたときに「イヤ」と反応する程度。
今思えば、これが「普通ではない」ことは分かるんですけどね……。
当時の私にとっては、これが当たり前の状態で、第一子の子育てなので比べる対象もおらず、気づくことができませんでした。
1つ目を書き終えると、次から次へと気になることが出てきました。
気がつくと、A4用紙が困りごとや悩み事でびっしり……。
そのとき初めて、「育てにくさってこういうことなんだ」と気づき、「長男は普通の子ではない」と確信しました。
診察室で心のモヤが晴れていく
初診当日。
大量の問診票を記入した後、心理士と事前面談、医師の診察という流れでした。
心理士との面談で「困っていることはありますか?」と聞かれたとき、思わず感情が込み上げてきて涙が溢れてしまいました。
「うまく話せないので、ここに書いてきました」
前日に書いたメモを渡しました。
メモを読んでいる心理士の表情が険しく見え、なんだか余計なことをしてしまったのではないかと不安になりました。
そのメモは心理士から医師に渡されました。
医師の診察へ
診察が始まってすぐ「お母さんこれまで本当に大変だったでしょう。本当にご苦労様です」と言われました。
この言葉がとても嬉しかったです。一気に心が軽くなったようでした。
そして、「発達検査を受けてから、正式な診断となりますが……」という前置きをしつつ、「自閉症スペクトラム障害です」と告げられました。
発達障害、自閉症スペクトラム障害についての説明を聞き、長男の様子やこれまで感じてきた疑問に答えてもらい、どんどん心のモヤが晴れていくのを感じました。
「大変って言ってもいいんだ」
「相性が悪いからじゃなかったんだ」
「私の育て方の問題じゃなかったんだ」
と、心が軽くなっていくのを感じました。
これまでずっと「みんなも同じことを乗り越えている」と自分に言い聞かせながら踏ん張ってきたけど、もう強がらなくていい。
私たちのことを分かってくれる人がいるということが、何よりも心強く感じました。
久しぶりに「愛しい」と感じられた
診察を終え、コンビニへジュースを買いに行きました。
コンビニに行くことですら、長男とではとても大変でした。
手をつないでもすぐに振りほどかれ、会計中にコンビニから出ていこうとする。ゆっくり商品を選ばせてもらえない。
赤信号でもお構いなし。「危険」を理解できずに、車道に飛び出そうとする。
信号待ちではいつも、地面に膝をついて後ろから膝に座らせるように抱えていました。それすら逃げようとするんですけどね……。
この日、信号待ちで長男を後ろから抱えているとき、久しぶりに長男に対して「愛おしい」という感情が沸いてきました。
いつから私は、長男に対して愛情よりも、感情をぶつけることしかしていなかったんだろう……。
「今までたくさん怒ってごめんね、これからはもっと優しいママになるね」
長男をぎゅっと抱きしめました。
おまめ